おめでたいマダイ(真鯛)

今回からは、瀬戸内海に棲息する魚介類を紹介してゆきます。まずは、『しまなみ人』開設を記念して、おめでたく “マダイ” をとりあげます。

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  1. おめでたいマダイ(真鯛)
  2. わが国では古来より、赤色を縁起の良い色としてきました。お祝い日には、お赤飯を炊いて祝いますよね!!体色が赤く、美味で、目が大きいマダイは、“おめでたい魚” として祝宴には欠かせない食材とされてきました。江戸時代、将軍就任の儀には、瀬戸内から江戸まで船内の生け簀いけすで運ばれたマダイが食膳を飾っ たそうです。

  3. マダイとのなが~いおつきあい
  4. わが国では縄文時代から、マダイを食していたようです。各地の貝塚(人が貝類を食べた後、その殻を捨てた場所、およびそれらが堆積してできた遺跡のこ と)からは、多くのマダイの骨が出土しています。
    また、古事記や日本書記などの古典にはアユに次いで2番目に多く登場し、日本人と深いつながりを持った魚であるといえます。

  5. マダイの生態
  6. マダイは、スズキもくタイ科に属します。全長は1メートルに達します。北海道以南、本州、四国、九州の沿岸と東シナ海に分布します。
    成魚は、冬のあいだは水深150~200メートルの砂地混じりの海底に棲息しています。成魚は、甲殻類(エビやカニなど)、クモヒトデ、貝類、小魚などを食べて暮らしています。
    春になり、海水温が14~15度になると、成魚は繁殖のために群れをなして繁殖場所へ移動を始めます。3~5月の産卵前は、栄養分を蓄え身にあぶらがのって美味となり、『桜鯛』と呼ばれ珍重されます。
    オスがメスを追い回す求愛行動を繰り返し、海面近くで放卵、放精します。1尾のメスが1シーズンに産する卵数は数十万から数百万で、1度ではなく数十回にわたって産卵します。
    ふ化した仔魚しぎょは、海面を漂うプランクトンを食べて成長します。稚魚になると沿岸の藻場もばに移動して、ここに棲息するアミ類やヨコエビ 類を食べて成長し、秋までここで暮らします。
    10センチメートルほどに成長した幼魚は沖合へ移動し、深い海に棲息するエビやカニなどを食べて越冬します。

  7. 日焼けするマダイ
  8. わが国では、マダイの養殖が盛んに行われています。日光が届く浅い水深では、マダイが日焼けして色が黒くなり、商品価値が下がります。そのため、養殖 生け簀を黒いネット等で覆って光が当たらないようにします。
    また、マダイの赤い色は “アスタキサンチン” という色素によりますが、養殖業者はこの色素を含む餌(オキアミなど)を与えて、いわゆる「色上げ」をすることによって、赤い色をもたせるようにしています。

次回は、マダイと同じタイ科の『クロダイ(チヌ)』 を取り上げます!!

筆者紹介

阪本憲司
阪本憲司福山大学生命工学部海洋生物科学科 准教授・博士(農学博士)
尾道の対岸に浮かぶ向島むかいしまに移り棲み、かれこれ20年近くになります。向島は、”しまなみ海道”をつなぐ島のうち、尾道側から一番目の島になります。向島の最高峰『高見山たかみやま』の山頂展望台から眺める風景は、季節や時間を問わず、いつでも素晴らしく、風光明媚な瀬戸内の自然を存分に体感できます。

私は京都市に生まれました。その後、長崎(佐世保)、三重(伊勢)、徳島(小松島)、岩手(盛岡)、宮城(仙台)、広島(尾道)と日本各地を転々としてきました。これらの地の風土に暮らし、さまざまな自然の姿をみてきたことで、ほかにはない”しまなみ”の素晴らしさを実感しています。

『しまなみ海中散歩』と題したこのコーナーでは、瀬戸内海のことや、ここに棲息している魚介類のことなどを皆様に紹介してゆきます。どうぞよろしくお願い致します。

おめでたいマダイ(真鯛)”へ2件のコメント

  1. やちまる より:

    先生!なぜタイではなく、マ「真」ダイというのですか?

  2. 阪本憲司 より:

     例外もありますが、一般的にマダイなど和名の最初にマ(真)が付く魚というのは、その『科』の中において“代表的な魚”で、タイ科の代表格が『マダイ』ということです。タイ科の魚は、世界に約100種類が存在します。このうち日本にいるのは、クロダイ、チダイ、キダイなどの13種類です。
     マダイのように『真』がつく魚には、マサバ、マアジ、マハゼ、マアナゴなどがおり、見るからにその『科』の代表魚らしい外観をしています。
     因に、『科』というのは分類単位のひとつで、上から「界」「門」「綱」「目(もく)」「科」「属」「種(しゅ)」です。ヒトだと、動物界?脊椎動物門?哺乳綱?霊長目?ヒト科?ホモ属?サピエンス種となります。

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